-訪日プログラム-
-Programs of Visiting Japan-

G8北海道洞爺湖サミット記念ロシア青年使節団

洞爺湖

2008年7月に開催される「G8北海道洞爺湖サミット」に先がけて、5月17日~5月26日の期間にロシア青年使節団が日本を訪れました。参加者はモスクワ、サンクトペテルブルク、ハバロフスク、ウラジオストク、ユジノサハリンスクにある日本の在外公館から推薦された総勢49名。ロシアの市場化促進支援を目的としてロシア各地に設立された日本センターでの日本語講座をはじめとする各種講座の修了者、日本語履修大学生、ジャーナリストで構成される大使節団となりました。

今回の使節団の訪問目的の一つに、サミット主要議題の一つでもある環境問題に対する日本の取り組みへの理解を喚起し、マスコミの取材を通して隣国ロシアでのサミットへの関心を高め、これによってロシアの市民レベルでの環境問題に対する意識を高めることがありました。エコ、リサイクル関連施設等の見学、環境セミナーへの参加、北海道の自然遺産見学などを通じて日本が環境に配慮する姿勢をアピールする絶好の機会となりました。

日本語履修大学生にとっては、今回の訪問中ロシア語を学ぶ日本人大学生らと実際に交流することができたことで、日本への関心はさらに深まりました。
また北海道根室、羅臼では、北方領土問題啓発施設を訪問しました。また、元島民の方たちとの懇談会に参加し、ロシア国内では知りえない生の声を聞くことができました。両国間に存在する問題の深さを改めて考えさせられました。

納沙布岬

ロシア使節団滞在日程

5月17日(土)

夕刻、ユジノサハリンスクからの一行が第一陣として到着。

5月18日(日)

モスクワ、サンクトペテルブルク、ウラジオストクからのグループが到着。

5月19日(月)

いよいよ公式日程第1日目。

はじめに外務省でロシア交流室長らによる日露関係ブリーフィングを受けました。今回訪問の目的と意義を認識し、これからの日程に臨む気持ちを新たにしました。

そのあと、学生たちは青山きもの学院へ。講師の先生から着付けに関する話を聞いた後、女子学生は実際に着付けを体験しました。


午後には全員で日本文化学習の一環として、裏千家東京道場で茶道を体験することができました。ロシアとは全く異なる文化を体験して日本人の精神文化の一端を知ることができたようです。

夕刻、ハバロフスクからの一行が到着。これで全員がそろい、夜には日本人大学生や日本青年会議所の方たちとともに、日露双方のアーティストが出演する交流イベントに参加しました。日本人の青年たちと親交を深め、訪日前に持っていた日本人に対する認識が少しずつ変わっていきました。

交流イベント

5月20日(火)

この日は日本センター講座修了者、日本語履修大学生、ジャーナリストの3つのグループに分かれて終日別行動になりました。

日本センター講座修了者の一行は、まず、日産自動車㈱横浜工場を視察しました。日産自動車発祥の地で自動車の心臓部であるエンジン製造工場を見学。またCO2排出量削減、資源の有効活用、環境負荷物質の低減など企業の環境への取り組みを知りました。

工場側との熱心な質疑応答

午後は東京に戻り、ロシアNIS貿易会にて専門家から日露ビジネスの実態を聞きました。その後、日本青年会議所メンバーの方々と一緒に秋葉原や浅草を散策、仕事の話をするなどにぎやかに交流しました。

秋葉原にて

浅草寺にて

ジャーナリストグループはまず、東京都中央卸売市場・築地市場を訪れ、日本の食材の流通の現場を取材、市場関係者からも詳しい説明を受けることができました。午後は技研公開2008が開催されているNHK放送技術研究所を訪問、一年に一週間だけNHKの最先端放送技術の成果を披露する技研公開2008ではスーパーハイビジョンやフィルム液晶スクリーン等、非常に興味を持って視察しました。

学生グループは上智大学を訪問し、ロシア語学科の授業に参加しました。ラティシェワ先生の2年生の会話の授業で、活気溢れる雰囲気の中、たくさんの日本人学生とお互いが学ぶ言語を使って会話の実践に挑みました。

5月21日(水)

早朝に羽田を発って北海道へ。一般グループは札幌へ直行、ジャーナリストグループはサミット開催地の取材のため洞爺湖へ向いました。天候に恵まれ、中島もきれいに見えました。首脳会談の会場となるザ・ウインザーホテル洞爺、国際メディアセンターでは各メディアとも精力的に取材しました。

ザ・ウインザーホテル洞爺

国際メディアセンター

会場横の和菓子店

夜には全員が札幌にそろい、日本青年会議所北海道地区協議会のメンバーの方々を中心とした交流会に参加、終了後も場所を替えて夜遅くまで交流は続きました。(写真提供:日本青年会議所北海道地区協議会)



5月22日(木)

【午前】
北海道大学と日露青年交流委員会との共催で、同大スラブ研究センターの組織・運営によって開催された「環境が結ぶ隣国:ロシア青年使節団との対話」に参加しました。上田宏北大北方生物圏フィールド科学センター教授の司会により、日本における環境研究の第一人者の3名の先生方から興味深い講演を聞きました;江淵直人北大低温科学研究所教授による「オホーツク海の環境変動」、斉藤元也東北大農学研究科教授による「東北地方における複合生態フィールド科学の構築」、中村將琉球大熱帯生物圏研究センター教授による「日本の亜熱帯沿岸域の環境と動物」 です。地球温暖化による海水温の上昇が生態系に及ぼす影響などが地球規模の問題であることを再認識しました。その後、ロシア青年使節団参加者からもたくさんの質問が出され、活気のある討論が続きました。

【午後】

ロシア青年使節団の代表と日本青年会議所代表が道庁を表敬しました。

学生グループは北海道大学スラブ研究センター若手研究員の方々の案内で、札幌市内と小樽に分かれて散策しました。札幌市内は藻岩山ロープウェイ、大倉山リストやミュージアムを、小樽は遊覧船や運河などを楽しみました。

その他のメンバーは、使用済み自動車処理を扱う環境ソリューション企業マテック社石狩工場視察へ。自動車が解体されていく工程を詳細に見学。部品として使えるところは再利用、それ以外の部分は材料リサイクルするという、環境問題に真剣に取り組む姿勢に参加者の興味は尽きませんでした。


【夜】

北海道プログラムの関係者の皆さんとの交流レセプションに出席しました。


5月23日(金)

今日からの2日間は根室と羅臼の2グループに分かれることになりました。モスクワ、ウラジオストク、ハバロフスクの学生参加者は根室へ、サンクトペテルブルク、ユジノサハリンスク、ハバロフスクの学生以外の参加者は羅臼へ出発です。

根室グループは到着後北海道立北方四島交流センター(ニ・ホ・ロ)を訪問し、北方四島の自然、日露間の交流と歴史の様子を見学しました。


そのあと納沙布岬にある望郷の家、北方館を訪問しました。岬に立つと歯舞群島が間近に見え、館長の説明に耳を傾けながら、領土問題の大きさを実感することができました。根室市役所を訪問して市長表敬も行いました。

納沙布岬から歯舞諸島を望む

夜には元島民との懇談会に出席しました。

羅臼グループは女満別空港からオホーツク海沿いを世界自然遺産知床に向いました。「そこにエゾ松の群生する所」の意を持つオシンコシンの滝を経由して訪れた知床自然センター付近では、散策路に少し足を踏み入れると原生林の中で野生の鹿に遭遇しました。そこから知床半島を横断して羅臼へ向いましたが、天候に恵まれ、バスが知床峠を越えるとすぐ目の前に国後島が現れ、その近さを目の当たりにしました。峠を下れば羅臼町、宿舎では羅臼町の方々や元島民の方々が温かく迎えて下さいました。夜には、近くの渓谷の露天温泉、熊の湯にも地元の方々と一緒に入りました。

知床世界自然遺産のオシンコシンの滝

羅臼町で元島民との懇談会

根室でも、羅臼でも、元島民の方たちから、終戦当時の生々しい状況を直接聞き、常に望郷の念を抱きながら、四島が返還されることを待ち望んでいる人たちの多いこと、未解決の問題が存在するにも関わらず、元島民と現島民の間で人道的な交流が行われていることも知りました。この問題を早期解決することの重要さを痛感しました。

5月24日(土)

羅臼グループは、羅臼町長もご一緒いただき、知床ネイチャークルーズのエバーグリーン号で日露中間点を視察に行きました。このあたりは少し霞んでいましたが、国後島の眺望がうっすらと眼前に広がりました。シャチの姿を見ることもできました。羅臼港に戻り、羅臼ビジターセンターで知床の自然保護に関するお話を聞きました。

洋上から羅臼港を望む

羅臼ビジターセンターにて

根室グループは原始の自然が残るラムサール条約登録湿地風蓮湖・春国岱を見学しました。

春国岱にて

この後、各グループはそれぞれ東京に向かいました。サハリンからの参加者とは女満別空港でお別れです。短い期間でしたが、すっかり仲良くなり、名残が惜しまれました。

5月25日(日)

ウラジオストクからの参加者は今日が帰国の日。

日本語履修学生たちは、日露の学生交流に実績のあるインカレサークル日ロ学生会議と日ロ学生交流会に所属する日本人大学生の案内で都内散策に出発しました。学生同士で気のおけない交流ができました。本当に楽しくて、疲れも忘れて歩き回ったこの日のことは一生忘れないでしょう。

日本センターからの参加者はパナソニックセンターを訪問。日本の最先端技術を駆使しエコロジーに取り組む企業精神を学びました。

「ようこそ G8北海道洞爺湖サミット記念ロシア青年使節団」の
ボードを背に記念撮影

5月26日(月)

ハバロフスクからの参加者は新幹線で新潟へ。モスクワ、サンクトペテルブルクからの参加者は成田空港から帰路につきました。密度の濃いスケジュールで、充実した日本滞在となりました。

また、会う日まで。さようなら。


参加者印象記

アンジェラ(学生)

日本に来る機会を与えてくださったことに感謝したいです。何もかも全てが面白かったです。私たちはたとえようもなく素晴らしい印象を受けました。ここで皆さんと仲良くなり、別れが大変惜しまれましたし、もっといろいろな所に行きたかったので1週間は短かったですが。私は、今回の旅は参加者一人一人にとって忘れられないものとなり、私たちの心にいつまでも残るだろうと思います。
追伸:皆さんの国をもう一度訪れたいと思います。ありがとうございました。

オクサーナ(日本センター修了者)

このような温かい歓迎と充実したプログラムを本当にありがとうございました。たった一週間で私たちは日本の文化、伝統についてたいへん多くの新しい、そして興味深いことを知ることができました。私にとって特に印象深かったのは長い間夢見ていた茶道体験と知床半島視察です。北方領土元島民の方々の考えと歴史を聞いたことも大変興味深いことでした。今回の旅は、日本語と文化をより深く学びたいという私の願望をより一層強くしました。ロシアに帰ったら、同僚、友人、日本センターの生徒たちに必ずや日本の良い印象を話したいと思います。心から感謝しております!

オリガ(ジャーナリスト)

日本の文化、歴史、伝統との驚くべき触れ合いをありがとうございました。プログラムは参加者の要望を考慮して構成されており、サミット開催地訪問ができたことについては特に感謝したいと思います。うれしい発見と出会いにあふれたこの貴重な旅の思い出は、わたしたちの心に残ることでしょう。どうもありがとうございました。

ヤコブ(日本センター修了者)

今回の日程を手配してくださり、心から感謝しております。日本とその伝統や人々に近づくことができて楽しかったです。皆さんのおかげで私はたくさんの新しい友人を得ることができました。日露友好関係継続のために私で出来ることがあれば何でもやるつもりです。本当にありがとうございました!

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