ブリャート国立大学はブリャート共和国の首都、ウラン・ウデ市にあります。ブリャート共和国はモンゴル系であるブリャート人が多く住んでいて、独特な雰囲気があります。ウラン・ウデ市外にはロシアの仏教の総本山があり、また、市内にいくつか仏教寺院があります。リンポチェ・バフシャという寺院には祈りの旗をトンネル状にしたヒー・モリンがあり、ブリャートの風を楽しむことができます。
ヒー・モリン(хий морин)。ブリャート語で「風の馬」という意味。
チンギス・ハンが陣地にしたと言われる崖。ここでも祈りの旗がはためいている。
ウラン・ウデ市の名所というと、市内中心部にある巨大なレーニンの頭部像ですが、ブリャート国立大学の本部キャンパスはこのレーニンの視線の先にあります。私の勤務している東洋学院のビルである8号館は本部キャンパスの斜向かいで、国立オペラ・バレエ劇場の向かいと、とても恵まれた立地に建っています。
レーニンの頭部像。像の後ろには市役所、隣には共和国議会がある。
東洋学院のビル。結婚式を終えたカップルが建物の前で写真を撮っていることも。
日本語コースのある極東言語・文学学科の教員室はビルの5階にあり、日本語の授業も大体5階で行われています。ウラン・ウデ市はどこからも近郊の山々を望むことができますが、教室のある5階からは特に山がきれいに見えます。
日本語コースの学生数は約30名(2021年10月末現在)で、日本語文法や会話だけでなく、テキスト分析や言語史、日本語教育論まで幅広く学んでいます。現在、私は1・2年生の聴解・会話、3年生の古文、そして4年生のビジネス日本語を受け持っています。全て日本語で教えているのですが、特に古文の授業のシラバスを作るのは、私自身苦手科目だったこともあり大変でした。そんな古文の授業の取り組みをここでご紹介したいと思います。
4年生のビジネス日本語の授業の様子。この日のテーマはビジネスメール。
10月5日は教師の日だったため、教師の代わりに4年生が下級生の授業を行った。
古文の授業では主に清少納言の『枕草子』を扱っています。毎回格段のテーマのことばを穴抜きのクイズにし、答えを考えてもらう活動をしています。答え合わせのあとはあらためて文の内容を確認しながら、当時の日本の人の考えに触れさせるようにしています。そして、清少納言の考えと自分の考えを比較してもらうため、「わたしの枕草子」と題して、毎回のテーマに沿って自分なりの『枕草子』を作る試みをしています。ここで、今までに学生が書いた「わたしの枕草子」から2つ紹介します。
うれしいもの(うれしきもの):一日中食べなかったあとの夕方の食事。試験の合格。長い間会えなくて、やっと家族に会えること。
めずらしいもの(ありがたきもの):一回で試験に合格するのは珍しい。先生が宿題を出さないとき。バスに人がいないとき。
学生の書いた「わたしの枕草子」。試験は学生にとって一番の悩み。
実はブリャート国立大学の成績評価はとても厳しく、留年になってしまう学生が後を絶ちません。学生は昼休憩もろくに取れない状況の中、朝は早くて8時から授業を受けています。
ウラン・ウデ市はとてものんびりしたのどかな街ですが、「わたしの枕草子」からはそんな厳しい状況に置かれている学生の苦しみが垣間見えるようで、どうか卒業まで踏ん張ってほしいと思いながら授業をしています。