-滞在記- 若手研究者等フェローシップ( 2009 年度)

前田しほ

2010年1月

ロシアでの長期滞在は2度目ですが、12年ぶり、しかもイルクーツクから首都モスクワへということで、まず「何でもある」ことに驚きました。そして、携帯やインターネットが普及していて、いつでも日本に電話できるし、いつでも日本語で情報を得ることができることに、まさに隔世の感を覚えました。今思えば、郵便局でたどたどしいロシア語で国際電話を申し込んだり、食料品や日用品を買うのに何度も行列に並んだ経験は、貴重なものです。そういえば、イルクーツク時代に、町に航空機が墜落して、日本では家族がとても心配したのに、そうとは知らずのんびり過ごし、後で猛烈に怒られたということもありました。

あまり変わっていない面もあります。それは食料品がおいしいということです。そもそもロシア料理は香辛料をあまり使わず、素材の旨みをひきだすことに長けています。しかし、それができるのは、素材がいい場合に限ります(もちろんこれは町にあふれる「なんちゃって日本料理」レストランを除外しています。基本的に自炊生活ですので、この場合スーパーで買う食材に限定しての主張です。もうひとつ、レトルト食品も私の担当ではありません)。そしておいしい食料品は、なぜか安い。バター、スメタナ、ケフィールなど乳製品、豆(乾燥)、野菜、肉(ただし、モスクワの魚はやはり鮮度が不安)、どれをとっても、日本で買うより安いし、圧倒的においしい。なぜなのか。同じ食材でも、例えば、ロシアのメーカーが作った安いほうがおいしい。

ここから先は推測ですが、ロシアでは添加物があまり浸透していないこと、人件費が安いことにその秘密があるのではないかと思います。つまり、外国から輸入されて日持ちのいい便利な添加物満載のスメタナと、昔ながらの素朴な製法で作られて、1週間ですっぱくなってしまうスメタナと、どっちを選ぶか、ということです。これは生き方の問題でもあります。すでにロシアでも、設備投資をして、人的整理をして、魔法の粉で作ったスメタナが大手をふるっていますが、庶民的なスーパーではまだまだ「ナチュラル」な食料品ががんばっています。日本では、有機野菜も、伝統的な製法でつくられた昔ながらの食料品も、すっかり贅沢品となっていますが、ロシアでは庶民の味方なわけです。そして、私もロシアでは、ここぞとばかりに贅沢を楽しんでいるのでした。

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