若手剣道家グループ派遣プログラム
日露青年交流センターは、ロシア青年問題局からの要望を受け、若手剣道家グループを派遣しました。今回は、角正武名誉教授(剣道範士八段)率いる福岡教育大学剣道部代表団16名がロシアを訪問しました。ロシア剣道連盟の協力もあり、モスクワ武道館に老若男女100名を超える剣道家たちが集結し、3日間にわたり交流試合で竹刀を交えました。
日本語教育に取り組む高校訪問では、日本語を学ぶ生徒の皆さんに剣道を紹介したり、日本語でコミュニケーションを取るなど、交流に努めました。
今回のプログラムはロシア剣道連盟、モスクワ武道館、第1555番モスクワ国立言語高等学校の協力を得て、実現しました。
ついに待ちに待ったロシアへ出発しました。今回の参加者は、福岡教育大学剣道部員の多数の希望者の中から抽選で選ばれた17名です。角先生を除いた16名はロシアに行くのは初めてでした。
2日目 12月10日ロシアに到着して2日目、ロシアの方々との剣道交流会がありました。
道場に着き、気合を入れて中に入ると、大勢の人たちが大きな声で“おはようございます!!”と挨拶をしてくださいました。その誠実な姿勢と、人数の多さもさることながら、大人だけではなく、学生や小さな子どもまでいたことにも非常に驚きました。ロシア側と日本側、向かい合って正座し、角先生が講話をなさいました。角先生の講話は簡潔明瞭で、ロシアの方たちも聞き入っていて、時には笑いもありました。
その後、さっそく福岡教育大式の準備運動で稽古が始まりました。掛け声も、“一、二、三、四!!”と気迫あふれるもので、私たちも気合が入りました。面をつけて基本打ちの稽古が始まると、私たち学生が上座に立たせていただき、基本打ちを受けました。その一本一本が真剣で、私たちがアドバイスをすると、“はい、ありがとうございました。”と返してくださいました。自分の稽古に対する姿勢はどうだったか、剣道と真摯に向き合い、他者への感謝は持てていただろうかと、ロシアの方々の剣道に対する姿勢を見て感じました。このようにして午前中の稽古が終わり、私たち自身、むしろロシアの方々から教わったことのほうが多かったように思います。稽古後、ロシアの方々と様々な話をしました。言葉はわからなくても相手の表情やジェスチャーで読み取り、自然と笑顔で会話をすることができました。
午後の稽古は約2時間の間応じ技の稽古を行いました。人数がとても多かったので、一つの技を稽古できる回数が少なかったのですが、みんな一回一回の技の稽古を大切にして、全身全霊で技の稽古を行っていました。その後、互角稽古を約1時間行いました。互角稽古では角先生、本多先生、竹内さん、学生が元に立って稽古をしました。ロシア人剣士と剣を交えるのは初めての経験で、ロシア人独特の攻め方やリズムに多少困惑しながらも、いい手本を示すことが出来るように、普段の稽古よりも身が引き締まる思いだったのを、今でも鮮明に覚えています。終了後には、稽古した相手とコミュニケーションをとり、英語やボディランゲージを駆使しながら、剣道に関するアドバイスをしました。その際も必死に理解し、少しでも強くなりたいという気持ちが伝わってきました。私も見習うべきことだと切に感じました。
第1555番モスクワ国立言語高等学校訪問
日本語教育を取り入れている高校を訪問しました。学校はとても大きく、とてもおしゃれな造りでした。中に入ると先生方や生徒の皆さんに歓迎していただきました。日本語の上手さに皆驚きました。グループに分かれてのティータイムでは、身振り手振りで言葉の壁を越えて大いに賑わいました。ロシアの生徒さんたちの日本に対する関心はとても高く、さまざまな日本文化について知っていました。一通りの学校案内が終わると、次はロシアの生徒さんたちのさまざまな出し物が披露されました。スライド発表や歌の発表、どれも上手な日本語が使われていました。
その後、今度は日本文化の紹介として、本多先生による剣道のレクチャーや角先生による書道の実演がありました。剣道のレクチャーではロシアの学生は食い入るように話を聞いているのが印象的でした。
短い時間でしたが、多くのロシア人学生と仲良くなることができ、楽しい時間を過ごしました。
語学学校に続いて、在ロシア日本国大使館を訪問し、公使参事官の方のお話を聞きました。現在の日露関係や、外交官の仕事の内容などについて詳しく話していただきました。中でも意外だったのはロシア人には日本や日本人のことが好きな人が多いということでした。日本とロシアの間には領土問題などがあり、ロシアに対してあまりいい印象を持っていませんでした。しかし、あまりいい印象を持っていないのは日本人だけであり、メディアの報道に惑わされすぎなのではないかと思いました。実際にロシアに対してよい印象を持っている日本人は少なく、約3割の人しかロシアのことをよく思っていないということでした。確かに日露には昔から抱えている問題が多々あります。しかしそれは政治上の問題であって、私たちがそのままの印象を鵜呑みにしてはいけないのだと痛感しました。ロシア人の日本に対する肯定的なイメージを片側通行にならぬように、日本人ももっとロシアについて知ろうとする必要があると思います。
大使館で過ごしたのはわずか1時間でしたが、とても内容が濃く、考え方が変わるものでした。
2日目からの稽古会も、今日が最後となりました。はじめは防具をつけずに、日本剣道形を行いました。有段の方になると1本目から7本目まで完璧に覚えていて、自分たちが戸惑ってしまうほどでした。日本語も英語もなかなか通じず伝え方に苦労しましたが、ジェスチャーを交えながら伝えると皆さん笑顔で答えてくれました。自分たちも多くのことを勉強させていただきました。その後防具をつけて1時間ほどの互角稽古を行いました。稽古最終日ということもあり、皆さん今まで以上に一生懸命稽古されていました。稽古後は全体で集合写真を撮りました。その後もあちらこちらで写真を撮ったり連絡先の交換をしたりしました。今回知り合った国を超えた剣友を今後も大切にしていきたいと思います。2日目から始まった計5回ほどの稽古も、あっという間に終わってしまいました。ロシアの方の稽古に対する取り組みや姿勢、学ぶことが本当に多いロシアでの稽古会でした。今度はぜひ福岡教育大学にも来ていただきたいです。
訪問最終日はモスクワ市内を視察しました。
今回の日露青年交流事業において剣道を通してロシア人剣道家の方々と交流を図ることができました。また語学学校訪問によって、剣道以外でも交流を図ることができました。さらに、大使館訪問での日露関係、市内視察等によるロシアの文化及び生活様式を目の当たりにすることができました。この6日間は私たちにとって非常に貴重な体験となり、今後の自身の人生において強い影響を及ぼす一要因になると確信しています。このような貴重な体験を糧とし、それぞれ今後の生活に役立てていくことができるよう努めていきたいと思います。
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