-ロシアの教室から-

様々なオンラインのつながりを活かして(カザン連邦大学 松尾恵理沙教師)


 タタールスタン共和国の首都に位置するカザン連邦大学では、2011年から同学内に日本学センターを立ち上げ、日本語教育が開始されました。現在、約130人の学生が日本語を主専攻として学んでいます。
昨今のコロナウィルスの影響により、私は日本からオンライン授業を実施しています。元々、日本人と交流する機会が少ない環境下にいる学生にとって、今は特に難しい局面が続いています。
しかしながら、この状況を逆手にとって、カザン連邦大学では様々なオンラインでの活動が加速化しています。その1例として、ゲストスピーカーを招いたオンライン授業の試みをご紹介したいと思います。

●授業概要:
・内容:ロシアの日系企業での就業経験・就職活動のアドバイス
・ゲストスピーカー:モスクワの日系企業に勤務するロシア人社員(日本語話者)
・参加学生:4年生16名
・目的:将来、日本語を使った仕事に就くイメージをする
・背景:カザンには日系企業が少ないという事情から、日本語を勉強しても将来使える術がないと考える学生が多く、就職を意識する学年は特にその傾向が強い。そのため、日本語学習へのモチベーションの維持が難しくなっている。また、自身の日本語力への過小評価、及び日系企業に関する情報の少なさも影響し、モスクワなど大都市の日系企業への就職に挑戦する学生が少ない。本状況を打開し、学生のモチベーションの維持・向上に役立てたいと思い、本授業を実施。

●授業の流れ:
・ゲストスピーカーより自己紹介、学生時代の日本語学習について(日本語で実施)
・日系企業での就業経験、日本人と上手に働くポイント、就職活動のアドバイス(ロシア語で実施)
・質疑応答(ロシア語で実施)

 ゲストスピーカーは学生と同じ立場(ロシア人日本語話者)であり、いわば先輩のような存在でもあるため、ゲストのこれまでの日本語学習など学生時代の経験についてはあえて日本語で話してもらいました。一方で、日系企業での就業経験、就職活動など専門的な話については、学生の深い理解を促したかったため、ロシア語での実施としました。

●授業後のアンケート
【アンケート(選択式)】

【アンケート(自由記述:学生の声)】一部抜粋
・自分が思っているよりも多くの日系企業がロシアには進出していることがわかり、日系企業で働くことに挑戦したいと思った。
・大学入学後初めて、詳しい就職活動についての情報と日本語を使った仕事の経験を知ることができた。
・ロシア人の視点で、日系企業で働く経験を直接聞く機会に感謝している。日本人と一緒に仕事をすることが実際にどのようなものかを理解できた。
 アンケート結果からもわかる通り、本授業に対する学生からの反応は非常に良好でした。ゲストスピーカーが学生と同じくロシア人日本語話者であり、リアルな声が聞けたという点も反響の高さの要因でしょう。また、本来の対面授業では叶わなかったであろうことが、ゲストがどこにいても参加できる環境にあるため(今回の場合、ゲストはモスクワから参加)、オンラインならではの強みを活用できたと考えています。
将来、一人でも多くの学生が卒業後日本語を使った仕事に就くことを切に願っています。


ゲストと学生の集合写真


 カザン連邦大学では、この他にも、弁論大会、大学間・学生間交流などオンラインで様々なイベントを実施しています。本年3月には新たに「日本の詩 朗読コンクール」をハイブリッド型で開催する予定です。
コロナ禍と上手に付き合いながら、カザンで日本語を学ぶ学生にとって実り多き活動になるよう、これからもカザンの日本語教育と青年交流事業を盛り上げていきたいと思っています。

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